ラブレター:なんでやねん

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「認知症だけど、いつも笑顔を絶やさない母へ。」(和歌山県東牟婁郡・51歳女性)

お母さんへ
毎日、ふと、顔を合わせた時にお母さんの口から何気なく出る、
「あのぉ、どなたさんでしたかいな?」という言葉がイヤでイヤで、悲しくて、切なくて、いつも私、しかめっ面をしてお母さんの世話をしていたね。

あれだけ愛してくれたあなたでも、病気には勝てずに、一人娘の顔も名前も、忘れ果
ててしまいました。
ほんとに、忘れちゃったのかな?
いや、記憶のどこかに、置いてきちゃったんだと思っておこう。
しかし、その“やるせなさ”に、つい、気がつけば暗い顔をしていたのです。
そんな毎日の中、今年の夏のある日、夫がこんなことを言いました。
「認知症は確かに、症状が進むほど、目の前にいる人が誰なのかを判別するのが難しく
なる。でも、本に書いてあったんやけど、相手が誰なんかはわからんでも、笑っている
か怒っているかをその表情から読み取る力は、健常者と大差ないそうやで」
そう、教えてくれたのです。
ごめんね、お母さん。
笑顔や、優しい気持ちはちゃんと伝わるのに、いつも私、怖い顔してて、いやだったで
しょ?
あなたは病んでからでさえ、笑顔を絶やさずニコニコしているのに、だけど病気だか
らしかたなく、しかたなく、「あのぉ、どなたさんでしたかいな?」なんて、娘の私に
言ってしまうだけなのにね。


(続きは本で)

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