ラブレター:遊園地で

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「結婚を控えた娘に」(滋賀県守山市・64歳男性)

娘・ミサトへ
いよいよ来月、結婚するんやね。
おめでとう。

ジューン・ブライドに憧れてたはずやのに、きみは結局、お母さんの旅立った八月を、
式の日に選びました。お母さんも天国で喜んでるでしょう。

あなたの母親であり、私の妻であった、我々の最愛の女性は、ある、小さな記事として
新聞にも掲載された交通事故により、きみがまだ6歳の時に亡くなりました。

突然すぎて、悲しみ抜いて、途方に暮れて、精神的に参ってしまった私は、
死のうとしたんです。バカなことに、きみを連れてお母さんを追いかけようとした。

その日、最後の思い出にと、家族でよく出かけた遊園地に2人で行きました。
きみは嬉しそうに、はしゃぎ回った。
いつも家族で乗ったメリーゴーランドにひとりで乗るきみを、私は精いっぱいの笑顔
を作って、だけど力なく手を振って、きみが「お父さーん!」と呼ぶ声に必死で応えて
いました。
とにかくきみは楽しそうで、これが最後の遊園地になることも知らずに、いや、今日
が最後の日であることも知らずに、元気いっぱいに走っては、乗り物をハシゴしてた。
きみが楽しげであればあるほど心は痛んで、でも、心が痛めば痛むほど、必死で笑顔
を作るようにしました。

やがて急流すべりを乗り終わって、こちらに駆けてきたきみは、満足げな表情で見上
げつつ、私と手をつないで、ニコニコしながらこう言いました。
「もういいよ、お父さん。もう、お母さんのところに行こ」
きみは気づいてたんやね。
きみを抱いたまま、ムリヤリ、父親の私がこの世を去ろうとしていたことを、なぜか
知っていたんやね。

この言葉で、私はハッと目が覚めました。

(続きは本で)

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